「相変化研究会の設置」趣意書
2007年10月
主査 小泉安郎(工学院大学)


 相変化を伴う熱輸送は,顕熱と比較して数十倍の大きさを持つ潜熱を利用していることから,大量の熱輸送や機器の温度制御などに工業的に広く利用されている.例えば,連続鋳造冷却過程,熱交換器(蒸発器,凝縮器)やヒートパイプに利用されている.蒸発器やヒートパイプでは,沸騰熱伝達を定常的に利用していることからこれまで非常に多くの研究がなされ,沸騰熱伝達の整理式も提案されており,工業的には成熟の域に到達している.また,沸騰熱伝達における限界熱流束については,甲藤・原村のモデルでマクロ的には共通の理解にまで到達している.しかしながら,沸騰現象を詳細に観察すると二相の流れの状態によって伝熱特性が大きく異なることから厳密には,それぞれの流動状況に対応した素過程にまで立ち入る必要がある.一方,連続鋳造冷却過程では,高温面はいわゆるライデンフロスト温度以上にあることから液で冷却されると高温面上の状態は膜沸騰状態から核沸騰状態まで非定常的な冷却過程を辿りながら推移している.この複雑な過程については,測定の困難さなどから正確な状況把握,例えば濡れ開始点と急速な冷却開始点と最大熱流束点の関連,あるいは固液の接触開始条件は共通な理解には至っておらず,ここの研究者間でさえも認識に相違点が見られる.

 

相変化研究会では,上記の問題に対して共通な理解をし,さらにここの点として以下の点について研究会で検討する.

1.液が蒸気になる素過程の把握

2.固液の接触の条件とMEB

3.ライデンフロスト温度と自発核生成温度