電気自動車用ヒートポンプのための光熱超撥水表面による着霜抑制・急速融霜

超撥水性と光熱変換を組み合わせ,低温環境での熱交換器性能低下を抑える表面機能化技術

論文タイトル:Copper-based photothermal superhydrophobic surfaces with multi-level structures for applications of anti-icing, ice-melting and rapid deicing
著者:Liwei Dong, Minxia Li, Chaobin Dang, Jintao Niu, Chenxu Wang
掲載誌:Applied Thermal Engineering, 292 (2026) 130286
DOI:10.1016/j.applthermaleng.2026.130286

研究概要

本研究では,超撥水性と光熱変換機能を組み合わせた機能性表面に着目し,低温環境における着氷抑制,光熱融氷,および急速除氷の有効性を実験的に評価しました。 得られた知見は,電気自動車用ヒートポンプ熱交換器における着霜抑制および低エネルギー補助融霜技術への応用が期待されます。

電気自動車では,熱交換器の着霜が冬季の暖房性能,除霜エネルギー,航続距離だけでなく,フロントガラスの曇り除去や視界確保にも関わります。 本ページでは,この課題に対する光熱超撥水表面の可能性を分かりやすく紹介します。

研究概要図(Graphical Abstract)

電気自動車用ヒートポンプのための光熱超撥水表面による着霜抑制・急速融霜を示す研究概要図。背景,研究アイデア,実験評価,作動メカニズム,主な結果,適用分野を整理した図。

図:電気自動車用ヒートポンプ熱交換器を応用背景として,光熱超撥水表面による着氷抑制,融氷,急速除氷の考え方と代表的な実験結果を1ページにまとめた概要図。

研究の背景と目的

寒冷・高湿環境では,電気自動車用ヒートポンプの室外熱交換器に霜が形成され,空気流路の閉塞,圧力損失の増加,および熱交換性能の低下を引き起こします。 その結果,冬季の暖房性能低下,除霜頻度の増加,消費電力の増大,航続距離の低下が生じます。

さらに,除霜中の暖房性能の低下やフロントガラスの曇り除去性能の低下は,車室内の快適性だけでなく,視界確保や運転安全性にも関わる重要な課題です。 そのため,低エネルギーで局所的かつ迅速に氷や霜を除去できる補助融霜技術が求められています。

本研究の特徴

  • 超撥水性:液滴と固体表面の接触面積を小さくし,着氷を遅延させる。
  • 光熱変換:照射光を熱へ変換し,表面を局所的に加熱して融氷を促進する。
  • 低氷付着性:氷と表面の界面に薄い水膜を形成し,付着力を低下させる。
  • 排水促進:融解水や氷を滑落させ,再凍結や残水のリスクを低減する。
  • EV応用:熱交換器の性能維持,除霜エネルギー低減,視界確保への貢献を目指す。

提案手法と作動メカニズム

1. 着氷前

表面の微細構造により空気層が保持され,液滴と固体表面の接触面積が小さくなります。 これにより,低温環境下での着氷が遅延されます。

2. 光照射時

光熱変換機能により,照射された光エネルギーが熱に変換され,表面が局所的に加熱されます。 この局所加熱により,形成された氷の融解開始が促進されます。

3. 融解開始時

氷と表面の界面に薄い水膜が形成されると,氷の付着力が低下します。 固体同士の強い付着状態から,水膜を介した滑りやすい状態へ変化することが重要です。

4. 除氷時

低付着化された氷や融解水は表面から滑落しやすくなり,残水や再凍結のリスクを低減できます。 このように,超撥水性による着氷抑制と,光熱変換による能動的な融氷促進を組み合わせることで,低エネルギーで迅速な除氷を実現します。

本研究の中心的な考え方は,「着氷を遅らせる」ことと「形成された氷を素早く除去する」ことを,同一の表面機能で実現する点にあります。

主な研究成果

高い光吸収性能 808 nmにおける吸収率は最大 95.90% に達し,優れた光熱変換性能を示しました。
着氷遅延効果 −10°Cの条件において,着氷時間を対照表面と比較して 1625 s 遅延させることに成功しました。
低照射強度での融氷開始 光熱性能の向上により,融氷開始に必要な照射強度は 0.10 W/cm² まで低減されました。
融氷時間の短縮 低照射強度条件において,総融氷時間は最大 51.53% 短縮されました。
除氷エネルギーの低減 傾斜面での光熱除氷実験において,除氷に必要なエネルギーを約 14.31% 低減できることが確認されました。
急速除氷への有効性 融解後の滑落・排水を促進することで,氷を単に融かすだけでなく,表面から速やかに取り除く可能性を示しました。

今後の展望

本研究で示された光熱超撥水表面は,電気自動車用ヒートポンプ熱交換器における補助融霜技術として有望です。 冬季運転時における暖房性能の維持,除霜エネルギーの低減,熱交換器効率の向上,および航続距離低下の抑制に貢献することが期待されます。

今後は,実際の熱交換器形状,気流条件,霜層形成条件,および長時間運転時の耐久性を考慮した評価を進めることで,電気自動車用ヒートポンプシステムへの応用可能性をさらに検証していく必要があります。

想定される適用分野

本技術は,以下のような低温熱管理分野への応用が期待されます。

電気自動車用ヒートポンプ 空気熱源ヒートポンプ 低温用熱交換器 冷凍・空調機器 防着氷・融氷が必要な熱管理システム 冬季の視界確保・安全性向上

まとめ

光熱超撥水表面は,低温環境における着氷を遅らせ,光照射により融氷を促進し,低氷付着性によって除氷を加速できる有望な表面技術です。 これらの機能は,電気自動車用ヒートポンプ熱交換器における低エネルギー補助融霜技術として活用できる可能性があります。

結論: 光熱超撥水表面は,電気自動車用ヒートポンプ熱交換器の低エネルギー補助融霜技術として有望です。

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