研究概要
本研究では,宇宙用蒸気圧縮冷凍・ヒートポンプシステムを対象として,水平円形ミニチャネル内におけるR134aの流動沸騰熱伝達を,常重力,月重力,ゼロ重力の各条件で数値解析しました。3次元VOFモデルを構築・検証し,重力レベルが流動パターン,熱伝達係数(HTC),気液分布,および重力独立性判別基準に及ぼす影響を明らかにしました。
論文内容の1ページ図解

図:宇宙用VCRHPシステムを背景に,水平円形ミニチャネル,R134a流動沸騰,VOFモデル,常重力・月重力・微小重力での流動パターン比較,HTC変化,各パラメータの影響,重力独立性判別基準をまとめたGraphical Abstract。
研究の背景と目的
宇宙機では,限られた設置スペースと厳しい重量制約の中で,電子機器や環境制御システムを安定に冷却する必要があります。蒸気圧縮冷凍・ヒートポンプシステムは,高効率な熱管理技術として期待されています。
ミニチャネル熱交換器は,比表面積が大きく,小型・軽量で冷媒充填量を削減できるため,宇宙用熱管理システムに適しています。
一方,重力レベルが変化すると,気液分布,気泡成長,気泡離脱,流動様式,液膜補給,壁面乾きなどが変化し,流動沸騰熱伝達に大きな影響を及ぼします。
本研究の目的は,水平ミニチャネル内R134a流動沸騰における重力レベルの影響を明らかにし,宇宙用ミニチャネル蒸発器・熱交換器設計のための指針を得ることです。
本研究の特徴
- 宇宙用VCRHPを対象: 宇宙機の蒸気圧縮冷凍・ヒートポンプシステムにおける水平ミニチャネル蒸発器を想定しました。
- 3重力条件の比較: ゼロ重力,月重力,常重力を同時に比較しました。
- 3次元VOF数値モデル: R134aの気液界面,気泡成長,流動様式をVOFモデルで追跡しました。
- 主要因子を体系的に評価: 質量流束,熱流束,飽和温度,管径がHTCに及ぼす影響を解析しました。
- 重力独立性判別基準: シミュレーション結果に基づき,重力の影響を無視できる条件を示す新しい判別式を提案しました。
提案手法と作動メカニズム
1. 水平円形ミニチャネルモデル
全長260 mmの水平円形ミニチャネルを設定し,前後30 mmを断熱区間,中央200 mmを一定熱流束の加熱区間としました。入口は飽和液R134a,出口は圧力出口,壁面は非滑り条件としました。
2. 物性値と相変化モデル
R134aの物性値はREFPROPから取得し,温度関数として近似しました。VOFモデル,CSF表面張力モデル,SST k-ω乱流モデル,Lee相変化モデルを用いて気液二相流と蒸発を解析しました。
3. 重力条件と評価因子
重力条件としてゼロ重力,月重力,常重力を設定し,質量流束G,熱流束q,飽和温度Tsat,管径DがHTCと流動パターンに及ぼす影響を評価しました。
4. 重力独立性の判定
微小重力下HTCと常重力下HTCの比が0.9以上であれば重力の影響が無視できると定義し,Bo,WeG,ReGを用いた新しい重力独立性判別式を構築しました。
主な結果
今後の展望
本研究は,宇宙用VCRHPシステムにおける水平ミニチャネル蒸発器設計に対し,重力レベルが流動沸騰熱伝達に与える影響を定量的に示しました。
今後は,実験によるさらなる検証,宇宙機搭載熱管理システムへの統合評価,異なる冷媒・管形状・熱負荷条件への展開,および長時間運転時の不安定性やドライアウト発生の解析が重要になります。
想定される適用分野
本研究の成果は,宇宙環境で使用される小型・軽量・高効率二相熱管理システムの設計に応用できます。
まとめ
本研究では,R134aの水平ミニチャネル内流動沸騰を3次元数値解析し,ゼロ重力,月重力,常重力条件での流動パターンとHTCを比較しました。
重力低下によりHTCは低下しますが,質量流束の増加,熱流束の低下,飽和温度の上昇,管径の縮小により重力の影響を弱めることができます。
論文情報・リンク
論文タイトル:Numerical simulation of R134a flow boiling heat transfer in a horizontal mini-channel under various gravity levels
掲載誌:International Journal of Heat and Mass Transfer, 235 (2024) 126141
DOI:https://doi.org/10.1016/j.ijheatmasstransfer.2024.126141
著者:Qifan Wang, Jianfeng Cao, Dandan Su, Minxia Li, Chaobin Dang, Xuetao Liu, Ruitao Song, Jing Li