アスペクト比が異なるマイクロチャネル蒸発器の着霜特性と性能に関する実験的研究

冷媒分布,霜成長,および着霜時性能に及ぼすアスペクト比の影響を定量評価

論文タイトル:An experimental investigation on frosting characteristics and performance of microchannel evaporators with varied aspect ratios
著者:Haikun Zheng, Dan Zhang, Wei Sheng, Xiaoru Hao, Xiaozhuan Chen, Chaobin Dang, Mengjie Song
掲載誌:Energy, 309 (2024) 133162
DOI:10.1016/j.energy.2024.133162

研究概要

本研究では,アスペクト比の異なる3種類のマイクロチャネル蒸発器を対象に,霜付き環境下での冷媒分布,着霜特性,および熱交換性能を実験的に評価しました。赤外線サーモグラフィとデジタル画像処理を用いて冷媒分布を定量化し,霜高さ,霜被覆面積,霜重量,空気側圧力損失,蒸発圧力,冷媒圧力損失,熱伝達率の変化を解析しました。

論文内容の1ページ図解

アスペクト比が異なるマイクロチャネル蒸発器の着霜特性と性能に関する図解。

図:研究背景,3種類の蒸発器,実験方法,冷媒分布評価,着霜特性,性能低下,および応用分野を1ページにまとめた概要図。

研究の背景と目的

マイクロチャネル蒸発器は,高効率かつコンパクトであるため,冷凍・空調・ヒートポンプ・輸送機器などで広く利用されています。一方,低温・高湿度条件ではフィン表面に霜が形成され,空気流路を閉塞し,空気側流動抵抗と熱抵抗を増加させ,熱交換性能を大きく低下させます。

マイクロチャネル蒸発器の構造,特にアスペクト比は,内部の冷媒分布を変化させ,表面温度分布と霜成長に影響を与えます。本研究の目的は,異なるアスペクト比を有する蒸発器において,冷媒分布と着霜特性が性能劣化にどのように関与するかを明らかにすることです。

本研究の特徴

  • 3種類の蒸発器比較: アスペクト比 0.67,1.00,1.56 のマイクロチャネル蒸発器を比較した。
  • 冷媒分布の定量評価: 赤外線サーモグラフィと画像処理により,冷媒の二相領域と過熱領域を判定した。
  • 霜成長の画像解析: 霜高さ,霜被覆面積,霜重量,霜閉塞率を定量化した。
  • 性能評価: 熱伝達率,蒸発圧力,冷媒圧力損失,空気側圧力損失の変化を測定した。
  • 設計指針: 着霜環境に適した蒸発器アスペクト比の選定指針を提示した。

提案手法と作動メカニズム

1. アスペクト比の異なる蒸発器の比較

同じ総伝熱面積を持つ3種類の蒸発器 A,B,C を用意し,それぞれのアスペクト比を 0.67,1.00,1.56 としました。これにより,外形比の変化が冷媒分布と霜成長に与える影響を比較しました。

2. 赤外線サーモグラフィによる冷媒分布評価

蒸発器表面温度の赤外線画像を取得し,完全蒸発点を基準として二相領域と過熱領域を分けました。各フラットチューブ内の冷媒分布の均一性は RDP(Refrigerant Distribution Parameter)により評価しました。

3. 画像処理による霜層評価

霜画像を二値化し,霜高さ,霜被覆面積,霜閉塞率を算出しました。さらに湿り空気の入口・出口状態から霜重量と霜成長速度を評価しました。

4. 性能劣化の評価

着霜時間の経過に伴う熱伝達率,蒸発圧力,冷媒圧力損失,空気側圧力損失を測定し,アスペクト比の違いによる性能劣化の差を解析しました。

主な結果

冷媒分布の均一性乾燥条件での RDP は蒸発器 A,B,C でそれぞれ 0.8830.8360.779 となり,アスペクト比が大きいほど冷媒分布の均一性が低下しました。
霜形成領域霜は主に,冷媒が液相または二相状態で存在するフラットチューブ部分に形成され,冷媒分布と霜分布には強い対応関係が見られました。
霜閉塞率30分後の霜閉塞率は蒸発器 A,B,C でそれぞれ 21.48%38.02%43.26% でした。
霜重量実験終了時の蒸発器 C の霜重量は,蒸発器 A より 65.92%,蒸発器 B より 24.5% 大きくなりました。
性能低下蒸発器 C では,着霜により熱伝達率,蒸発圧力,冷媒圧力損失の低下が最も顕著で,それぞれ 61.07%31.7%52.83% と報告されています。
空気側抵抗30分後の空気側圧力損失の増加は蒸発器 C で最大となり,69.87% 増加しました。

今後の展望

本研究により,マイクロチャネル蒸発器のアスペクト比が冷媒分布,霜成長,空気側抵抗,および熱交換性能に強く影響することが明らかになりました。今後は,アスペクト比だけでなく,ヘッダ構造,フラットチューブ配置,フィン形状,表面処理を組み合わせた最適化が重要になります。

さらに,赤外線サーモグラフィと画像処理を用いた冷媒分布・霜成長の評価手法は,実機熱交換器の診断や設計にも応用できます。数値解析やAI予測モデルと組み合わせることで,霜付き条件に強い高性能蒸発器設計への展開が期待されます。

想定される適用分野

本研究の成果は,霜付き条件で作動する各種蒸発器・熱交換器の設計に応用できます。

空気熱源ヒートポンプ冷凍・空調機器電気自動車熱管理冷蔵・冷凍システムコンパクト熱交換器着霜診断・性能予測

まとめ

本研究では,アスペクト比の異なるマイクロチャネル蒸発器を用いて,冷媒分布と着霜特性が熱交換性能に与える影響を実験的に調べました。

アスペクト比が大きい蒸発器では冷媒分布の均一性が低下し,霜高さ,霜被覆面積,霜重量が増加し,性能劣化も大きくなりました。

結論: 実用上の設置条件が許す場合,着霜条件下ではアスペクト比の小さいマイクロチャネル蒸発器が有利であり,より均一な冷媒分布,少ない霜蓄積,優れた性能維持が期待できます。

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