濡れ性の異なる垂直二重表面間における霜生成と除霜水保持特性

空気熱源ヒートポンプ用フィン間流路における霜抑制・融解水保持・液橋形成の実験的評価

論文タイトル:Experimental study on the characteristics of frost formation and defrosting water retention between vertical double surfaces with different wettability
著者:Liwei Dong, Minxia Li, Chaobin Dang, Yingling Li, Jintao Niu, Qifan Wang
掲載誌:Applied Thermal Engineering, 257 (2024) 124158
DOI:10.1016/j.applthermaleng.2024.124158

研究概要

本研究では,空気熱源ヒートポンプの室外フィン付き熱交換器を想定し,濡れ性の異なる垂直二重平板間における霜生成特性と融解水保持特性を実験的に評価しました。裸銅親水面(BCS),疎水性銅面(HCS),超撥水性銅面(SHCS)を作製し,HCS–BCS,BCS–SHCS,HCS–SHCSの3種類の組合せについて,表面温度,表面間距離,表面濡れ性が霜層成長,流路充填率,除霜時間,液橋形成に及ぼす影響を明らかにしました。

論文内容の1ページ図解

濡れ性の異なる垂直二重平板間における霜生成と融解水保持を示すGraphical Abstract

図:空気熱源ヒートポンプのフィン間流路を背景に,BCS,HCS,SHCSの3種類の表面,3種類の濡れ性組合せ,霜生成・除霜プロセス,チャンネル充填率,除霜時間,融解水保持,液橋形成抑制をまとめたGraphical Abstract。

研究の背景と目的

空気熱源ヒートポンプは建物暖房に広く利用されていますが,寒冷・高湿条件では室外フィン付き熱交換器のフィン表面に霜が形成され,熱抵抗の増加と空気流路の閉塞を引き起こします。

除霜後にフィン間に融解水が保持されると,液橋が形成され,空気流路の再閉塞や再凍結を招きます。そのため,霜成長の抑制だけでなく,除霜後の水排出と液橋抑制も重要です。

従来研究の多くは単一表面の霜生成・除霜に着目していました。しかし実際の熱交換器ではフィンが狭い間隔で並んでいるため,二つの向かい合う表面の間で霜が成長し,融解水が保持される過程を調べる必要があります。

本研究の特徴

  • 実際のフィン間流路を模擬: 2枚の垂直表面を平行に配置し,熱交換器フィン間に近い狭い流路を再現した。
  • 3種類の濡れ性表面: 親水性の裸銅面BCS,疎水性銅面HCS,超撥水性銅面SHCSを作製した。
  • 3種類の表面組合せ: HCS–BCS,BCS–SHCS,HCS–SHCSを比較した。
  • 霜生成と除霜を連続観察: 霜層高さ,霜成長速度,流路充填率,霜生成完了時間,除霜時間,融解水保持を評価した。
  • 表面間距離を評価: 1 mm,2 mm,3 mmの表面間距離で液橋形成と霜生成特性を比較した。

提案手法と作動メカニズム

1. 表面作製と濡れ性評価

銅板を研磨・洗浄してBCSを作製し,フルオロシラン処理によりHCSを作製しました。SHCSはアルカリエッチングにより微細・ナノ構造を形成した後,低表面エネルギー処理を行って作製しました。

2. 垂直二重平板の霜生成実験

2枚の表面を垂直かつ平行に配置し,ペルチェ冷却により目標表面温度まで冷却しました。CCDカメラで側面から霜生成過程を観察し,画像処理により霜層厚さとチャンネル充填率を算出しました。

3. 自然除霜と融解水保持観察

霜生成完了後,DC電源を切ることで自然除霜を開始し,除霜完了時間と除霜後の融解水保持形態を観察しました。液膜,大粒径水滴,小球状水滴,液橋の形成を比較しました。

4. 濡れ性差による吸収現象

BCS上の大きな液膜やHCS上の冠状水滴は液橋を形成しやすい一方,SHCS上の小球状水滴は付着力が小さく,濡れ性差による表面張力作用で液膜に吸収されやすくなります。

主な結果

SHCSを含む組合せの霜抑制SHCSを含む組合せは優れた霜抑制性能を示しました。60分後の流路充填率はCombination 1と比べてCombination 2で 16.79%,Combination 3で 30.09% 低下しました。
表面温度の影響表面温度が低いほど霜成長は速く,60分後のチャンネル充填率は−6.7 ℃,−11.9 ℃,−16.4 ℃でそれぞれ 41.80%,62.13%,76.46% でした。
表面間距離の影響表面間距離が大きいほど湿り空気の供給空間が増えるため霜成長速度は速くなりました。一方,表面間距離が大きいほど流路空間も増えるため,霜生成完了時間は長くなりました。
除霜速度の違い単一表面ではSHCSの除霜速度が最も速く,次いでHCS,BCSの順でした。組合せの除霜時間は,2つの表面のうち遅く除霜する表面によって決まりました。
Combination 3の優位性Combination 3(HCS–SHCS)は,霜抑制と除霜時間の両面で有利であり,Combination 2と比較して除霜速度が最大約 12.93% 向上しました。
液橋形成の抑制表面間距離2 mmでは,Combination 2およびCombination 3では液橋が形成されませんでした。液橋抑制には,大きな液膜・水滴を避けることと,濡れ性差による「吸収」現象を利用することが重要です。
SHCS上の残留水滴SHCS上では半径0.38 mmより大きい水滴は脱落し,小さな水滴のみが残留しました。測定された最大残留水滴径は約 0.36 mm でした。

今後の展望

本研究は,空気熱源ヒートポンプのフィン間隔とフィン表面コーティングを選定するための基礎的知見を提供しました。特に,SHCSを含む組合せは霜生成を抑制し,除霜後の液橋形成を低減する可能性があります。

今後は,実際のフィン付き管熱交換器における空気流下での検証,長期耐久性,表面汚染,着霜・除霜サイクルの繰り返し,最適なフィン間隔と濡れ性パターンの設計が重要になります。

想定される適用分野

本研究の成果は,霜生成と除霜水保持が問題となる熱交換器設計に応用できます。

空気熱源ヒートポンプ室外フィン付き熱交換器寒冷地暖房除霜水排水設計表面コーティング設計フィン間隔最適化

まとめ

本研究では,濡れ性の異なる垂直二重平板間における霜生成と除霜後の融解水保持を実験的に評価しました。

SHCSを含む組合せは霜成長を抑制し,特にHCS–SHCSのCombination 3は霜抑制と除霜時間の両面で有利でした。また,濡れ性差による吸収現象は液橋形成の抑制に有効でした。

結論: 垂直二重表面間の霜生成・除霜水保持では,SHCSを含む表面組合せと適切な表面間距離が重要であり,HCS–SHCSの組合せは霜抑制,除霜時間短縮,液橋抑制の観点から有望です。

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