研究概要
本研究では,異なる溝状微細構造を有する超撥水アルミニウム表面を作製し,水滴の凍結遅延性能と凍結過程を実験的に評価しました。フェムト秒レーザー加工と低表面エネルギーコーティングを組み合わせ,溝間隔 40, 60, 100, 200, 300, 400 µm の表面を作製しました。接触角,転落角,凍結時間,凍結フロントの成長,過冷却時間,相変化時間を比較することで,微細構造間隔が液滴凍結挙動に与える影響を明らかにしました。
論文内容の1ページ図解
図:研究背景,作製プロセス,実験装置,溝間隔による濡れ性と凍結時間の変化,凍結メカニズム,主要知見,および応用分野を1ページにまとめた概要図。
研究の背景と目的
低温環境における液滴の凍結は,冷凍・冷蔵機器,航空機,送電設備,風力発電,輸送機器などで霜や氷の形成を引き起こし,エネルギー損失,機器性能低下,安全性低下の原因となります。
超撥水表面は,液滴と固体表面の実接触面積を小さくし,空気層を保持することで,凍結遅延を実現できる受動的防氷技術として注目されています。しかし,微細構造の幾何学的パラメータ,特に溝間隔が液滴凍結過程に与える影響は十分に明らかではありません。本研究は,規則的な溝状微細構造の間隔が液滴凍結時間と凍結フロント挙動に与える影響を体系的に評価することを目的としました。
本研究の特徴
- 規則的な溝状微細構造: 幅 20 µm,高さ 20 µm の溝状構造を6061アルミニウム表面に形成した。
- 溝間隔の系統的比較: D = 40, 60, 100, 200, 300, 400 µm の6種類の表面を比較した。
- 超撥水化処理: フェムト秒レーザー加工後,Ultra-Ever Dry低表面エネルギーコーティングを施した。
- 凍結過程の可視化: 5 µL水滴の凍結過程を高速度カメラで記録した。
- 凍結時間と凍結フロント: 過冷却時間,相変化時間,凍結フロント形状を定量評価した。
提案手法と作動メカニズム
1. 微細構造表面の作製
6061アルミニウム基板を研磨・洗浄した後,フェムト秒レーザー直描加工により規則的な溝状微細構造を形成しました。その後,低表面エネルギーコーティングを施し,超撥水表面を得ました。
2. 濡れ性の評価
各サンプルに対して水接触角(WCA)と転落角(RA)を測定し,溝間隔による濡れ性の変化を評価しました。溝間隔100 µmの表面で最大接触角が得られました。
3. 液滴凍結実験
5 µLの脱イオン水滴をサンプル表面に滴下し,冷却面温度を主に −15 °C に設定して凍結過程を観察しました。また,−10 °C および −20 °C 条件でも過冷却時間と相変化時間を比較しました。
4. 凍結フロントの解析
液滴内部の固液界面である凍結フロントの成長を追跡し,凸状から凹状へ変化する過程,端部成長の加速,凍結先端の形成を解析しました。
主な結果
今後の展望
本研究により,超撥水表面の微細構造間隔が液滴凍結時間,凍結フロント挙動,過冷却時間,相変化時間に大きく影響することが示されました。特に,溝間隔100 µmは接触角と空気層保持のバランスが良く,高い凍結遅延性能を示しました。
今後は,溝形状,高さ,幅,階層構造,コーティング耐久性,繰り返し凍結融解サイクルの影響を評価することで,実用環境に耐える防氷表面設計へ展開できます。
また,熱交換器フィン,航空機表面,送電設備などへの応用に向けて,凝縮,霜成長,着氷,除氷を含む総合的な評価が重要です。
想定される適用分野
本研究の成果は,受動的な防氷・着霜抑制を必要とする低温機器や屋外設備に応用できます。
まとめ
本研究では,フェムト秒レーザー加工と低表面エネルギーコーティングを用いて,溝間隔の異なる超撥水アルミニウム表面を作製しました。
溝間隔100 µmの表面は最大接触角と最長凍結時間を示し,微細構造の幾何学的最適化が受動的防氷性能の向上に有効であることが示されました。
論文情報・リンク
論文タイトル:Characterization of droplet freezing on superhydrophobic surfaces with different microstructures
掲載誌:Energy & Buildings, 327 (2025) 115109
DOI:https://doi.org/10.1016/j.enbuild.2024.115109
著者:Xu Han, Dan Zhang, Haikun Zheng, Wei Sheng, Xiaoru Hao, Xiaozhuan Chen, Chaobin Dang, Mengjie Song