自律移動型ロボットの制御

自律移動型ロボットの制御(H7〜H12) 長岡技大編



自律移動型ロボットに特に強い興味を持っていたわけではないのですが、NHKロボコンへの参加 を一つのきっかけとして自律移動型ロボット関連の研究をスタートしました。



最初のとっかかりは、トレースロボットへの挑戦です。トレースロボット競技会は全日本マイクロマウス大会(ニューテクノロジ振興財団) の一競技として行われており、自律移動型ロボットが与えられた周回コースを正確にトレースし、その周回時間を競う競技会です。とりあえずの目標は、成績は度外視して、そこへ参加して完走することとしました。ただ、参加するからには、何か特長をもたせないと目立ちません。そこで、前輪に対してハンドル操作を行なうことでコーナを抜けるロボットを作ることにしました。従来のトレースロボットは、歴史あるマイクロマウスの流れを汲んで、2輪独立にステッピングモータを設置して、センサからの情報に基づいてそれらの回転を適切に与えることでラインをトレースするというタイプが多かったので、ハンドル操作は注目を引く可能性があるのでは、と考えたわけです。また、駆動用のモータも直流モータを使用しました。

まったくゼロの状態から手探りで開始しましたので、難問が山積みでした。せまい実験室内一面にベニヤ板を敷いて作成したコース(公開されていた昨年度のコース) を完走できたのが競技会の直前です。その状態で競技会に望みました。ともかく目標は完走です。ところが、予想外の難敵がいたのです。それは競技場のベニヤ板の接合部の段差です。製作したロボットが、重くなってしまったためにその段差を越えることができずに、あえなくリタイヤ。でも、貴重な経験を積むことができました。

内山 暢(H7卒業論文)
トレースロボットの設計・製作



うまくいかないと、かえってやる気が出てくるというものです。翌年も卒業研究でトレースロボットをテーマに掲げることにしました。幸いというか、この年、北陸信越支部マイクロマウス委員会 においてトレースロボットのキット(エフテック株式会社 (TEL:025-286-6660) から販売) を利用した技術講習会が開催されましたので、それに便乗することにしました。キットとはいっても、ハードに関しては非常に高性能です。したがって、ソフトをしっかり組めば十分な成績をねらうことが可能です。


トレースロボットキット


完成度の高いハードを前提としますので、ソフトに集中できます。そこで特長をだすために、積極的に学習を取り入れることを検討しました。競技会のコースは競技当日まで公開されませんし、当然トレースロボットにコースを教え込むことは禁止されています。でも、ロボット自身が競技途中にコースを学習することは許可されています。ルールでは、3回のトライが許されていますので、最初のトライでコースを学習して、2回目3回目とその情報を活用すれば、高速化をねらえます。

時間の関係から、十分な調整ができたというわけではありませんが、それなりの仕上がりで競技会に望むことができました。結果としてタイムはそれほどでもなかったのですが、学習への試みを評価されて、ニューテクノロジ賞 をいただきました。

本間厚志(H8卒業論文)
トレースロボットの設計と製作



次の年(平成9年) は PIC の大活躍する年でした。
トレースロボットはメカトロ教育教材として非常に適しており、昨年のキットをさっそく学部2年生の学生実験 として利用することにしました。本実験は学生には好評でした。でも、このキットは、確かに性能は優れているのですが、少し高額です(とはいっても自律移動型ロボットとしては良心的な価格設定であると思います)。たとえば、工業高校などの実習用としてなかなか活用できません。もっと安価で手軽に教材として活用できるトレースロボットを製作することができないだろうか、ということでワンチップマイコン PIC を利用する案が浮上してきました。幸い、その方面で十分な実力をもつ学生も研究室に配属されてきましたので、すぐに取りかかることにしました。実は、この年は、日本機械学会主催の ロボットグランプリ が開催されることになっていました。また、NHKロボコン でも子機を必要とするテーマが出されました。ということで、ロボットグランプリ、ロボトレース競技会(マイクロマウス大会)、NHKロボコン、という一連のロボット製作において PIC を採用することになりました。さらに、その途中経過として、毎年仙台で行われている最先端ロボット技術コンクールにも出場することにしました。大変です。大忙しです。

まずは、最先端ロボット技術コンクールならびにロボットグランプリです。前年のプレロボットグランプリでは、2輪車を題材として大道芸部門にエントリしました(技術賞を受賞) が、同じことはできません。でも、時間の関係で十分なロボット作りをすることはできません。そこで、それほど時間をかけることなく、子供たちと一緒に遊べるロボット、ということを意識して、『だるまさんがころんだ』ロボットを製作することにしました。名前のとおり、だるまさんが転んだ、という古典的な日本の遊びを行なうロボットです。非常にタイトな条件の中で、精力的に学生が頑張ってくれましたので、それなりの仕上がりで5台のロボットが完成しました。滑り込みセーフ状態です。大会でもちゃんと動作してくれました。最先端ロボット技術コンクールでは 優勝 (とはいっても参加台数が1台だけですが)、ロボットグランプリでも 最優秀賞 を獲得しました。


だるまさんがころんだ


次はロボトレース競技会です。この年のロボットの発想は、教材として手軽に使えるロボット、に設定しましたので、スピードは重視しませんでした。でも大会では、ロボットなりに十分なタイムを出すことができたと思います。順位は最後から数えたほうが早い位置でしたが、当初の目的を達成したという意味で十分に満足のいくロボットを完成することができた思います。


PIC を搭載したトレースロボット


佐藤弘人(H9卒業論文)
PICを用いた小型トレースロボットの開発


この年度の最後の締めくくりが NHKロボコン です。子機6台を製作しました。残念ながら、2回戦敗退でしたが、子機の動作が評価され アイデア賞 をいただきました。転んでもただでは起きないってやつですね。しぶとーーい。



さて平成9年度に大活躍した PIC を搭載したロボットですが、ここまで頑張ってきてロボコンだけで終わってしまうのは非常にもったいない、と思い、なんとかメカトロ用教材として広く活用してもらえないものか、と考えました。その結果として登場したのが P-ROBO です。P-ROBO については P-ROBO と遊んじゃおう のページで詳しく紹介されていますので、興味ある方はご覧ください。


PIC を搭載したトレースロボット


この P-ROBO は、NHKロボットコンテスト大学部門世界大会における子機、孫機としても活躍しました。詳細はロボコンのページで紹介されています。また、昨年に引き続き、トレースロボット大会にも(こっそり)参加しています。さらに、この P-ROBO をベースとして画像情報に基づくフィードバック制御問題も議論しています。画像処理ソフトとして HALCON(株式会社リンクス より販売) を使用しました。

武士俣 進(H10修士論文)
画像情報に基づく自律移動型ロボットの制御
小川,武士俣,嶋岡,川谷:日本ロボット学会,Vol.19, No.3, pp.345/351 (2001)
画像情報を利用した2輪駆動型ロボットの制御


ロボットに視覚センサを搭載することによって,いろいろな可能性が生まれます。たとえば,トレースロボットでいえば,トレースラインの先読みにより,コースアウトを避けることができます。また,ラインが途切れていてもそれを補間して進むことができます。さらに,ライン上の障害物回避も行えます。

ところで,通常,視覚センサといえば CCDカメラが使用されることが多いと思います。最近では,どんどん高分解能化していますので,より正確に周囲の情報を手にすることができます。しかし,その分,処理すべき情報量が膨大なものとなり,高速高性能な処理系が必要となります。ロボットの行動目的にもよりますが,必ずしも正確に情報を入手する必要がない場合も少なからずあります。そのような背景で,低い分解能(画素数が少ない)の視覚センサを探していたときに,三菱電機製の人工網膜(CMOS イメージセンサ) の存在を知りました。この人工網膜は,任天堂の GameBoy のポケットカメラにも使用されています。ポケットカメラはインターネットオークションを利用すると格安で手に入れることができます。人工網膜の詳細については別のページに譲りますが,これを搭載したトレースロボットの開発を行いました。

人工網膜を搭載したトレースロボット


ロボットの詳細に関しては下記の論文をご参照ください。

金戸康宏(H12修士論文)
画像情報に基づく自律移動型ロボットの制御
高瀬健次郎(H13修士論文)
CMOSイメージセンサを用いた自律移動型ロボットの追従制御
ロボットの武者修業として,平成13年度マイクロマウス大会ロボトレース競技会に参加しましたが,あえなく予選敗退。来年度はぜひ決勝に出場したいと思っています。

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